The Fall of the Celestial Sphere

 『天球の没落』

 背景に使わせていただいた画像ですが、最初の赤い方はクリスマスツリー星団やコーン星雲などを含む NGC 2264 です。
 Image Credit: ESO
 https://www.eso.org/public/ireland/images/eso0848a/

 茶色っぽい方は「ほ座超新星残骸」の一部分「鉛筆星雲(NGC 2736)」をハッブル宇宙望遠鏡がとらえたものです。
 Image Credit: NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA);
 Acknowledgment: W. Blair (JHU) and D. Malin (David Malin Images)
 Hubblesite

 

 柊 愛里沙(ひいらぎ ありさ)

 The Axions の guitarist。
 lead guitar 候補筆頭なのだけれど、guitar ならばどのポジションでもこなせるため、強いこだわりがない。(これが後々まで彼女が lead guitar に固定されない理由の一つ)
 気が強そうな外見に反して、広く学び謙虚に努力することを意識している秀才で、「自分だけはまともな人間だと信じている変人」に事欠かない The Axions 関係者の中で、一般常識が通用する貴重な人物。……だったのだが、最近、某主力メンバーに影響されて変な風潮に染まってきている部分もある。
 半年前までは、同級生の父親が経営する小さなレストランでウェイトレスのバイトをしていた。

 一年前、通り雨にあった水月 鏡(みなづき きょう)が雨宿りのために偶然入った店で、入り違いで出て行った男(店長の娘にしつこくつきまとっているくせに、愛里沙にもちょっかいを出してくる)が戻ってきたと勘違いした愛里沙が、いきなり手にしていたコップの水を鏡の顔面に思い切りぶちまけてしまったのが出会い。
「……!? あなた、誰?」
「たぶん、お客」
 直後のドタバタ騒ぎの中で、大あわてでタオルを持ってきて謝罪する愛里沙の指先を見た鏡が「? 今、何を弾いてる?」と尋ねたのがきっかけで、決まって月曜の午後に来店するようになった「近所の大学の非常勤講師」水月 鏡と話をするようになった。天気の話から学校での友人関係の悩みまで、それこそいろいろと話をしたが、主な話題は、中学一年の時から毎日、ほぼ独学で練習しているクラシックギターに関することで、客がひけて数人だけになった時など、許可を求めて、小一時間も父親の形見のギターを弾いたりした。
 音楽の話ができる、ちょっと変わった雰囲気の先生。いつしか、彼の来店を待って髪を直している自分に気づき、はじめての感覚に戸惑いながら、ひとりで赤くなったりしていた。
 そんなある日、セミロングが似合う、モデルでもしていそうなきれいな女性客がテーブルに置き忘れていった先月号の雑誌を何気に見ていて、巻頭の特集記事『再編される The Axions。その理念と野望を白鳥京子に聞く』で、水月 鏡の本職が The Axions のミュージックプロデューサーなのを知った。そして、今日が一般からのオーディションの受け付け最終日であることを。
 悩んだのはほんの一瞬で、次の瞬間にはオーディションを受けるために店を飛び出していた。水月 鏡が小一時間も自分の演奏を聴いていてくれたという、ただそのことだけを頼りに。

 後日、水月 鏡はメンバー編成に関しては完全にノータッチだったことを複数の関係者から聞き、自分がなぜ選ばれたのかが不思議でならないでいる。思い切って彼に尋ねてみたところ、「おまえを見ていて、昔の自分を思い出したヤツがいたんじゃないのか」という、さらに訳のわからない返事をされ、戸惑っている。

 好きな曲 Rodrigo “Concierto de Aranjues”、Gipsy Kings “Inspiration”、and Eric Clapton “Layla”

 ちなみに、水月 鏡をメンバーの編成会議から外したのは大手レーベルから出向してきている社長・前島くらら(鏡の大学時代の先輩)で「あいつにハーレムを作らせる気はない。第一、あいつに女の子を選ばせたら、一途すぎて周りが全く見えてないのに暴走してしまう超強い達人とか、上手すぎてこちら側から一言の注文も出せないようなワールドクラスの名手とか、他人がうらやむような才能がありながらいじけてばかりで自主性がほとんどゼロの困ったちゃんとか、変なヤツしか来てくれないじゃないか」と主張したからだと言われている。
 社長秘書からそれを伝え聞いた彼は「確かに、変人がそろってしまったのは事実だ。普通なのは俺だけだ」とコメントしたとか。